オーディオショップで「スーパーツイーター付けませんか?」って勧められたことありませんか?「2万Hz以上の超音波で、音の透明感がアップしますよ!」なんて説明を受けて、実際に試聴してみると確かに音が良くなった気がする…。
でも、ちょっと待ってください。その効果、本当にスーパーツイーターのおかげなんでしょうか?
オーディオのチューニングをやってきた経験から言わせていただくと、実はその「音質向上」には別の理由が隠されているのかもしれません。今回はスーパーツイーターの本当の効果について、詳しく解説していきますね。
そもそもスーパーツイーターって何をするもの?
スーパーツイーターは、普通のスピーカーでは再生しきれない「2万Hz以上の超高域」を担当する専門スピーカーユニットです。
サブウーファーのように後付けで追加する製品で、ホーン型やドーム型などのさまざまな種類があります。
人間の耳で聞こえる音域は「20Hz〜2万Hz」と言われているので、理論上は「人間には聞こえない音」を再生するためのユニットということになりますね。
しかし、「聞こえない音なのに、なぜ音質が向上するのか?」これがスーパーツイーターの最大の謎なんです。
実はほとんど意味がない?その理由は
厳しいことを言ってしまいますが、一般的な使い方では、スーパーツイーターに期待される効果はかなり限定的です。その理由について解説します。
そもそもCDや音楽サブスクに超音波は入ってない
まず基本的なお話から。一般的なCDのサンプリング周波数は44.1kHzです。「サンプリング定理」という法則により、録音できる音の上限はその半分、つまり約22kHzまで。実際にはカットフィルターの影響で20kHz程度になることもあります。
つまり、ふつうのCDや音楽サブスク(Spotify、Apple Musicなど)には、物理的に2万Hz以上の音は入ってないんです。ハイレゾ音源には超音波成分も含まれていますが、オーディオソースには存在しない音を再生しようとしても、あまり意味はないんですよね。
人間の耳は2万Hz以上聞こえない
そして、人間の聴覚の限界についてです。
理論上は20kHzまで聞こえるとされていますが、加齢などの影響により実際はもっと低くなるでしょう。僕自身、定期的に聴力テストを受けているのですが、15kHz以上はもうほとんど聞こえません。
若い人でも、17kHz〜18kHz程度が上限という方もいます。モスキート音(17kHz)が聞こえる人なら、まだスーパーツイーターの効果を感じられる可能性もありますが…。
結論:存在しない音を、聞こえない耳で聴こうとしている
まとめると、一般的なCDや音楽サブスクには2万kHz以上の音は入っておらず、ハイレゾで録音されている場合でも、人間の耳では聞き取れない、ということになります。
「それじゃあ、スーパーツイーターって詐欺じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそういう訳でもないんです。実際に音がよくなると感じるはずなのですが、一般的に知られる理由とは異なるんです。
なぜスーパーツイーターで音はよくなるのか
「理論的には効果がないはずなのに、実際に使ってみると明らかに音が良くなった」という体験をされた方、きっと多いはずです。
これは決して錯覚でそう感じた訳ではありません。実際にスーパーツイーターで音質は向上している可能性は高いと言えます。ただし、その理由は残念ながら「2万Hz以上の超音波効果」ではないことがほとんどです。
スーパーツイーターを使った方からは、「シンバルがキラキラして聞こえるようになった」「音に透明感が生まれた」「ベースやピアノの音が生々しくなった」といった感想をよく聞きます。
実際にスーパーツイーターを付けた後で、僕自身もおなじ感想を抱くかと思います。では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか?
音質向上の本当の理由はこの3つかも?
ポイント1:聞こえる高音域を強調する効果がある
スーパーツイーター単体でも、2万Hz以上だけでなく、実は15kHz〜20kHzの「聞こえる範囲の高音域も一緒に再生されています。
この帯域が強調されることで、ハイハットやシンバル、弦楽器の倍音成分などが美しく響くようになります。「音がキラキラする」「透明感が増す」といった効果は、主にこの可聴域の上限の改善によるものなんです。
ただし、やりすぎは禁物。高音域を強調しすぎると聴覚疲労の原因になるので、適切なレベル調整(抵抗器による音量調整)が重要です。
ポイント2:フィルムコンデンサの魔法
実はこれがもっとも重要なポイントかもしれません。このポイントは多くのオーディオ愛好家が見落としがちな点です。
スーパーツイーターには必ず「ローカットフィルター」としてコンデンサが付属しています。ネットワーク回路の一部として低音域をカットして、スーパーツイーターを破損から守る必要があるためです。
ここで使われているのは、多くの場合「フィルムコンデンサ」という高品質なパーツであるケースがほとんどです。一方、2〜3万円クラスのスピーカーの内部では、コスト削減のために「電解コンデンサ」という安価なパーツが使われています。
フィルムコンデンサは電解コンデンサと比べて、音の透明感や解像度が格段に優れているため、高級機なスピーカーにも使われています。スーパーツイーターを追加することで、この高品質なコンデンサが信号経路に加わり、結果として音質が向上するというわけです。
「ベースやピアノの音が生々しくなった」といったケースでは、特にコンデンサの影響が強いものと思います。
ピアノの一番高いキーでも、周波数は4186Hz程度であるため、スパーツイーター単体でピアノやベースに影響を与える可能性は極めて低いためです。
おそらく、スーパーツイーター本体をただの抵抗器に置き換えても、同様の音質改善の効果を感じられる可能性もあります。
ポイント3:高級素材の振動板効果
高価格帯のスーパーツイーターでは、ベリリウムやダイヤモンドコートなど、通常のスピーカーでは使用されない高級素材の振動板が使われています。
これらの素材特性により、確かに美しい音色が聞こえることがあります。ただし、費用対効果で考えると、おなじ予算でメインスピーカーを上位機種に交換した方が、総合的な音質向上は期待できるでしょう。
スーパーツイーターより先に試すべきこと
ここまでの説明で、「スーパーツイーターの効果は主にフィルムコンデンサによるもの」ということがお分かりいただけたと思います。
それなら、スーパーツイーターを買う前に、既存のスピーカーにフィルムコンデンサを追加するのもひとつの手段です。
フィルムコンデンサを外付けで付ける
具体的な手法については、こちらのNoteで紹介しています。

フィルムコンデンサをスピーカー内部でパラレル接続する
0.1μF程度の小容量フィルムコンデンサを、スピーカー内部の電解コンデンサと並列に接続する方法です。全体のバランスを崩すことなく、音の透明感を向上させることができます。
おすすめブランドは、MUNDORFやAUDYN-CAPなど、数千円の投資で、数万円のスーパーツイーターと同様の効果を感じられる可能性もあります。
「でも、スピーカーのなかをいじるのは怖い…」という方もいらっしゃるでしょう。正直なところ、オーディオショップではこうした改造は受け付けてくれませんし、製品が保証の対象外となる点にも注意が必要です。やるとなったら自己責任でチャレンジするしかありません。
ハンダ付けに慣れていない方には少しハードルが高いかもしれませんが、YouTubeなどで基本的な作業方法を学んでから挑戦してみるのも一つの方法です。
どうしてもスーパーツイーターを信じてセッティングするなら
「理屈はわかったけど、やっぱりスーパーツイーターを試してみたい!」という方もいらっしゃることでしょう。その気持ちもよくわかります。
そんな方のために、スーパーツイーターを効果的に活用するための条件についてお教えします。
条件1 レコードやハイレゾ環境で再生する
一般的な音源では2万kHz以上の超音波は収録されていないため、以下の音源を使いましょう。
- アナログレコード:理論上、周波数の上限はありません
- SACD(DSD音源):高周波成分まで収録されています
- ハイレゾ音源;高品質なフォーマット
これらの音源なら確実に2万kHz以上も収録されています。ただし、ハイレゾ対応のサブスク音楽もありますが、環境が整える必要がある点に注意しましょう。
条件2:10万円以上の高品質スピーカーを使用する
メインスピーカーの性能が不十分だと、可聴域での音質がスーパーツイーターに負けてしまい、全体のバランスが悪くなってしまいます。
まずはメインスピーカーをしっかりとしたものにして、それでも物足りない場合にスーパーツイーターを検討するといった順序が大切です。
条件3:聞こえなくても気にしない心
最後は、精神論になりますが…。
人間の可聴域はあくまでも20kHzまでです。それ以上の音域は、人体の特性上聞こえてきません。なので、「聞こえない音域の空気感や雰囲気を楽しむ」という割り切った気持ちで使うのが、スーパーツイーターとの正しい付き合い方だと思います。
実はこのような考え方、僕は好きです。ロジックだけでなく、オーディオは感性で楽しむものですからね。
スーパーツイーターの楽しみ方も知ろう
スーパーツイータについて、少し辛口な内容になってしまいましたが、決して存在そのものを否定している訳ではありません。
大切なのは、正しい知識を持った上で、自分なりの楽しみ方を見つけることです。
また、オーディオの美しさを決めるのは、評論家の正しさではなく、自分自身が感じた感性にもあります。
スーパーツイーターを使うなら、もっと他の提案もあるといった内容を今回は伝えさせていただきました。
オーディオは奥が深くて楽しい世界です。ほんの少しの知識とあなたなりの最高の音を見つけてください。
スーパーツイーターを超えた、音質の世界を知りたい場合は、ねいろ屋のチューニングスピーカーもぜひお試しください!
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